経腸栄養における食物繊維の役割
経腸栄養管理下で、食物繊維は充足されていますか?
●病態時は絶食・疾患・薬剤などにより、下痢や便秘を起こしやすい環境下にあるため、経腸栄養剤の種類やその投与方法への配慮が必要となります。
●下痢や便秘などの消化器症状への対処・予防として、腸まで届いて機能する食物繊維を含有する経腸栄養剤を使用する方法があります。
プレバイオティクスとしての食物繊維
食物繊維は、上部消化管で消化吸収されずそのまま大腸まで届き、ビフィズス菌などの有益な細菌の栄養源となり、腸内環境を改善するプレバイオティクスとして働きます。
プレバイオティクスの種類
水溶性食物繊維 | 難消化性デキストリン、ペクチン、グルコマンナン など |
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非水溶性食物繊維 | セルロース、ヘミセルロース など |
オリゴ糖 | フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース など |
難消化性澱粉 | デンプンを温熱処理したもの |
経腸栄養管理時の消化器症状 -下痢と便秘-
下痢はもっとも高頻度に起こる消化器症状である一方、長期に渡る管理では、便秘が腹部膨満感や嘔吐を誘発するため注意が必要です。
経腸栄養管理時の下痢の原因
●原疾患、薬剤 | |
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●経腸栄養関連 | ・食物繊維の有無、乳糖含有の有無 ・経腸栄養剤の浸透圧 ・経腸栄養剤の投与方法 ・経腸栄養剤やルートの微生物汚染 など |
食物繊維は腸内細菌に利用され短鎖脂肪酸となり、大腸に取り込まれ、水分などの吸収の原動力となります。しかし、絶食や薬剤投与により腸内細菌による利用が低下すると、大腸の水分吸収能も低下し、下痢を起こすといわれています。
Bacterial Translocation(以下、BT)と腸内細菌叢
BTは腸粘膜の萎縮や腸内細菌叢の変化などで生じると考えられています。BTへの対策としてプレバイオティクスや経腸栄養の使用が挙げられます。
BTへの対策
BTの発生機序 | 対策 | 具体的な方法 |
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腸内細菌叢の乱れ | 消化管内異常細菌叢の正常化 | 胃酸度の維持 H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬の乱用禁止 抗菌薬の適正使用 Selective digestive decontamination プロバイオティクス、プレバイオティクス シンバイオティクス |
腸管麻痺の防止 | 腸管運動調節薬 | |
腸管バリアの破綻 | 消化管粘膜の物理的・ 免疫学的バリアの維持 |
経腸栄養 グルタミン投与 |
粘液層の維持 | 経腸栄養 | |
腸管の低酸素状態 | 腸管虚血の防止 | 適切な輸液・血管作動薬の投与 |